妄想限界 
オリジナルBL小説でございます。 同性愛の内容全開です。 不快になられる方はご覧にならないようお願いいたします。
妄想限界 
薫×芳人 迷い14
2008-08-14-Thu  CATEGORY: 長編
お産の待機をしながら、一人の医局でぼんやりとノートに目を落としていた。
認定医試験のための勉強をしながら、僕は医局で夜勤中・・・・。
ついさっき来たメールのことを考えていたの。
それはカオちゃんからと木原君からで・・・・・・。
木原君からのメールには、木原君は本気で僕を好きでいるから、僕にも本気になってほしい、ってことが書かれていた。
カオちゃんからのメールは、あの学会の夜以来初めて来たメールで、愛してるって書いてあった。
カオちゃんの気持ちに、胸が痛くなる。
同時に、木原君の気持ちが痛いほど突き刺さる。
自分がどうすればいいのか、本当にわからなかった。
愛してる人はカオちゃんだけだと思っていたのに・・・・・。
今更木原君の優しさをしみじみと感じていた。
短い間に、木原君のことを好きになりかけていたのだとわかったの。
二人のどちらにも、返信できずにいた。
いい加減な僕の言動が、引き起こしたことを、僕はどうやって片付けたらいいのかわからない。
一番いいことは、僕だけが傷つくこと。
二人には、何の罪もないの。
そのために、僕がすべきことはなんだろう。
何をしたらいいんだろう・・・・・。


二人には、しばらく会わないことにした。
丁度試験の時期と重なっていたから、それを不思議とは思わなかったみたいで、僕もほっとした。
僕の気持ちの整理はなかなかつかずに、今でもずうっと同じまま。
相変わらず木原君とカオちゃん、二人のことを考えていた。
卑怯だ。
僕は、こんなにも汚い人間なの。
いっそのこと、二人のどちらとも別れてしまおう、って思ってる。
こんな僕とは一緒にいない方がいいの。
以前の僕とは違って、僕にも一人で生きていける自信がついた。
僕は一人でも大丈夫だから・・・・。


試験が済んで、二人からメールが来た。
会いたいというシンプルな文字の列。
二人とも同じ内容で、僕の心を突き動かした。
でも・・・・・。
僕の心は決まったの。
もう二人には会わない。恋愛はしない、と。
こんなにも誰かを苦しませることが、もう二度とあってはならないの。
僕は僕らしく、一人で生きていくべきだったのに、それを破ってしまったのがいけなかった。
試験の終わった夜、一人きりの静かな部屋で色々考えながら、僕は二人に同じメールを返した。
僕はもう誰とも付き合えないことを。
だから、もう二度と会わないってことを。
そして、携帯電話の電源を落とした。
涙が後から後から溢れて止まらなかった。
静かな一人の夜。
僕は、これまでの思いを打ち消すように、一晩中泣き続けた・・・・・・・・。
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薫×芳人 迷い13
2008-08-13-Wed  CATEGORY: 長編
大きな窓のビルは、真っ暗な空へと静かに伸びていた。
人気のないロビーのインターホン。
覚えていた部屋番号を、震える指で押した。
考えがまとまっているわけじゃないし、言いたいことがあるわけでもない。
ただ、今の僕を伝えたかった。
そして、その後はカオちゃんが決めること。
カオちゃんが幸せになるために、カオちゃん自身が決める。
僕は僕の責任を果たすだけ。
・・・カオちゃんの部屋には、カメラがあったから、今僕がここにいることはわかったはず。
僕の耳に、ぶちりと回線の切れた音がした。
やっぱり僕には会いたくないのかな、って思った。
それって当たり前のこと。
カオちゃんとのことは、もう終わったんだって、そう思って、くるりと回れ右したら・・・・・。
エレベーターのつく音。
そして、ドアが開いて、僕は体を熱いぬくもりに包まれた。
「・・・・・・おかえり・・・・。・・・・おかえり・・・芳人・・・・・・。」
懐かしいカオちゃんの声。
匂いやぬくもりに、僕の体は震えた。
いつだって、僕を包んでいたのは、この熱い感情だった。
やがてそれは、僕を満たして、僕はカオちゃんだけしか見えなくなって・・・・・・。
ああ・・・・・・・。
やっぱり・・・・・。
やっぱり僕は・・・・・・・。
「・・・・・ごめんね・・・・・。そうじゃないの・・・・・。」
そう言ったら、僕を抱きしめている腕が、びくりと動いた。
伝えたいことがあるだけ。
僕にはもう新しい生活があって、仕事も家も捨てられるものじゃない。
腕を緩めたカオちゃんを、ゆっくり振り返った。
飛び込んできた、姿。
痩せたようで、以前よりも精悍さが増したみたい。
お風呂上りの髪は、黒くて濡れていた。
僕を見つめる目が赤くて、あの時のまま優しい、って思った。
僕は、精一杯カオちゃんに笑いかけた。
「・・・・・・こんな遅くにごめんなさい。・・・・・・・学会でこっちに来てね。それで、カオちゃんに伝えなくちゃいけないことがある、って思ったの。」
カオちゃんは、じっと僕を見ていた。
僕が何を言うか、恐れてるみたいに、僕を見ていたの。
そして、今の僕を洗いざらい話した。
カオちゃんのことを、まっすぐに見ながら、僕はきちんと話をすることができた。
僕にとって、簡単なことではなく・・・・。
カオちゃんとの最後の時間になってしまうかもしれなくて・・・・・。
でも、もしそうでも、これは自分が悪いことだから、自分にとっての罰で、カオちゃんの言うことを受け入れるって、それが当然だって。

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薫×芳人 迷い12
2008-08-12-Tue  CATEGORY: 長編
ホテルの部屋に戻ったら、木原君がいた。
「・・・あ・・・・・・。」
「先生。・・・・大丈夫?・・・あの人誰?」
まだ頭がふわふわしていて、はっきりと考えがまとまってなくて・・・・・。
「・・・うん・・・・・・。昔の知り合いの人・・・・・。」
「・・・かおる、って人は?」
木原君から発せられたその言葉に、はっと木原君を見た。
いつもにない、悔しそうな表情で、木原君は僕を見ていて・・・・・・・。
「・・・・・・答えられないんだ・・・・・。そうでしょ?」
「・・・あ・・・・・・。」
「・・・・・・・忘れてよ!そんな人のこと、早く!」
「・・・・あっ!」
木原君は、僕の肩に手をかけると、僕をベッドへ押し倒した。
そして、僕のシャツのボタンを、ぶちぶちってちぎって・・・・。
空いた胸に、口付けて・・・・・・・。
「あ・・あ!」
肌に吸い付かれて、何も考えられなくて・・・・・。
木原君に押さえつけられている腕が、じんじんしびれる・・・・・・・。
「・・・・あ・・・・俺・・・・・。」
どうしたらいいのかわからずに、ただ固まっていた僕を、木原君の目が捕らえた。
抑えていた物を、僕にぶつけてしまった木原君は、急いで僕から手を離した。
「・・・ごめんね、先生。・・・ごめん。・・・・・・怖かったよね?ごめんね?」
僕の体をひっぱり起こすと、木原君は、僕に背を向けた。
「・・・帰るね。・・・・・明日、また連絡するね。」
「・・・・・・あ・・・・・・・。」
僕に背中を見せたまま、部屋を出て行って、ドアが閉まるのと同時に、僕の目から涙が溢れた。
木原君の気持ちを、まざまざと知った。
僕のために、穏やかな恋愛を装ってくれてたって、わかった。
僕は・・・・・・。
僕は何も知らなかった。
それを心地いいとだけ思ってた。
僕を思ってくれている木原君の気持ちに、ずっと気づけていなかった。
僕は、本庄さんの言うとおりの人間で、二人を自分の気持ちのままに振り回してたんだ・・・・。
激しい自己嫌悪の波が僕を襲う。
攫われて、溺れて、ひたすらに自分を憎んだ。
大切な人達なのに・・・・・。
僕は何もわかっていなかった・・・・・・・。

このままじゃ、誰も彼もを傷つける。
誰も幸せになんかなれない。
なんとか出た結論は、僕を動かした。
急いでホテルを出て、僕は走った。
道を、空気を、体が覚えてる。
きっとどれだけたっても、たどり着ける・・・・・・。
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薫×芳人 迷い11
2008-08-11-Mon  CATEGORY: 長編
壁にかかった絵や、ソファで、高級な店、ってのはわかるけれど・・・・・・。
ちょっと怖くなった。
「・・・・・藤井さん、何考えてるんです?」
「・・・え?」
「・・・・こんなに何度も薫のところを離れて、どうしたいんだって聞いてるんです。」
本庄さんは、僕の肩を掴んで、ソファに座らせると、僕の隣に座って僕を覗き込んだ。
「・・・・・・僕は・・・・・カオちゃんが嫌いで離れたわけじゃないよ・・・・?」
気まずくて、自分の手を見つめる。
白くて小さい手は、痛々しいくらい強く握られていた。
「・・・・・・カオちゃんの隣にいられる自分じゃなくなったから・・・・だから・・・。」本庄さんは、僕の言葉を聞いて、つばを飲み込んだ。
「どういうことですか?・・・・それ。」
「・・・・あの・・・・・・。」
なんだかごまかせる気がしなくて、金子さんのことを正直に話した。
その時に僕が思ったことも。
そしたら、本庄さんは、表情を変えないまま、イライラと言った。
「馬鹿じゃないの・・・・・?・・・・・・それで薫のこと、何も考えてなかったのかよ?あいつがあんたのこと、どれだけ思ってるか知ってんのかよ?一人にされた薫がどうするか考えなかったのかよ?」
「・・・・カオちゃんは強いもの・・・・。・・・・・・何もない僕とは違って、カオちゃんには大切なものがたくさんあるもの・・・・・・。」
あの時感じたこと。
だから、離れても大丈夫だって思ったの。
「・・・・その中でも一番大切なのはあんただよ!・・・・・それなのに、アンタはもうあんな男と付き合ってる。薫はどうなるんだよ?」
本庄さんから発せられる言葉が、僕の胸に突き刺さる。
僕を大事にしてくれていた、カオちゃんのことを、思い出して・・・・・・。
どれだけカオちゃんが僕を思っていてくれていたのかなんて、僕は全然知らなかったし、知ろうともしなかった。
「・・・・付き合ってるわけじゃ・・・・・・。」
「・・・・・・ほんとに・・・・・。」
本庄さんは、片手で額を押さえると、僕に怒鳴った。
「何言ってんだ!あんなの誰が見たってそういう関係だろ!?・・・・・薫よりあんな男がいいのかよ!?」
カオちゃんより・・・・?
頭がぐるぐるする。
カオちゃんと木原君の顔が交互に、僕の中を回る。
「・・・・・・愛してるのはカオちゃんだけ・・・だよ・・・・?・・・・・・でも・・・・。」
「でも、何だよ?アンタのやってることは、卑怯だ!薫も、あの男も、両方傷つけてる!そんなのただの自己満足じゃねえか!」
自己満足・・・・・・。
両方傷つけている・・・・・?
僕に優しい二人。
僕は、自分のことだけしか考えてない・・・・・・・。
だけど・・・・・・。
そうかもしれない。
僕はいつも、その時が楽しければそれでいいかもしれない、ってそんな風でいた。
自分が本当に執着している物が何かとか、なくしたくないものや、それを守る気持ちを持たないまま・・・・・・・。
本庄さんと別れて、町をぼんやり歩きながら、僕は色々考えた。
カオちゃんのこと。
木原君のこと。
そして、僕のことを。
このままじゃ、皆が傷つく。
だけど、誰も傷つけたくない。
でも・・・・・・・。
そんな方法はないのかもしれない・・・・・・・。
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薫×芳人 迷い10
2008-08-08-Fri  CATEGORY: 長編
次のお店を決めて、店の前でメニューを見ていたら、何かを感じた。
理由はないけれど、そういうことってあるでしょ?
だから、メニューから顔をあげて、首を回してあたりを見た僕の目に・・・・・・。
知ってる顔が飛び込んできた。
頭の中が一瞬で白くなる。
木原君といる、幸せで暖かい気持ちが急にどこかへ飛んで行ってしまって・・・・。
その人は、僕の前まで歩いてくると、つないだ僕らの手を見て、顔をゆがめた。
「・・・・・今はこの男となんですか・・・・・。」
僕らを見下ろす大柄な体。
細いのに、たくましい、がっしりとした体つき。
風にのって香る、花の香りのコロン・・・・・・。
仕事帰りっぽい格好で、本庄さんが僕の目の前にいた。
「・・・・・・・あ・・・・・・。久しぶり・・・・です・・・・ね。」
やっとのことでそういったら、木原君が僕の様子に気づいた。
そして、本庄さんを見て、僕を見て・・・・・・。
僕の手を引いた。
「行こう?・・・顔色が良くないよ?」
「・・・・あ・・・うん・・・・・。」
木原君の後についていこうとした僕の手を、反対方向に強く引かれて・・・・・。
「待てよ。・・・・・逃げることないだろ。」
「・・・逃げてなんか・・・・・。」
本庄さんを見たら、目がとても怖くて、背筋を寒気が走った。
「・・・・・藤井さんは逃げたんでしょ?薫を置いて、一人で。」
薫、って言葉に、胸がどきんと鳴った。
「・・・あ・・・カオちゃんは・・・元気?」
気まずくて・・・でも、腕を強く掴まれていて・・・・・・。
どうすることもできない。
黙っているのも不自然で・・・・・・。
「どうでしょうね。・・・・・・藤井さんには関係ないんじゃないですか。」
冷たく言われて、それもそうか、って思った。
自分の中にどういう理由があっても、僕はカオちゃんに黙って家を出て行って、それきりだった。
自分のことばかり考えていて、カオちゃんがどう思うかなんて思わなかったから。
「・・・・そうだね・・・・・。」
「先生?帰ろう?・・・・・明日も早いんでしょ?」
木原君が僕を覗き込む。
そうしたい。
だけど、本庄さんは僕の腕を離してくれそうになかった。
「・・・・うん・・でも・・・。ごめんね、先に戻ってて?あとで電話するね?」
木原君は、曖昧な顔で僕を見ると、僕と繋いでいた手をほどいた。
「うん。・・・・・待ってるね。」
「うん・・・・。」
少し笑って、去っていく後姿を確かめて、本庄さんに目を戻したら・・・・・。
こっち、って腕を引っ張られて、小さな店の個室に閉じ込められた。
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