妄想限界   薫×芳人 芳君の悩み7

薫×芳人 芳君の悩み7

それで、少し回復して、もう一度立ち上がって、その男を見たら。
「芳?誰、それ。」
「・・・・わかんない。知らない人なのに。」
向こうから来たカオちゃんが、僕に気づいて声をかけてくれた。
「へえ。・・・人違いじゃないですか?さ、行こう。」
カオちゃんが男の人越しに手を取ってくれて、僕を抱き寄せるようにしてお店の外に連れて行ってくれた。
しばらく歩いて、僕はカオちゃんを見上げた。
「・・・・ありがと・・・・・・。」
「・・・・・・・・俺はね、今、猛烈に嫉妬してるんだから。・・・・しばらくほうっておいて。」
カオちゃんは前を見たままそういうと、僕の手を強く握った。
嫉妬?
何に?
何だかびっくりして、言うとおりカオちゃんをそっとしておいてあげた。
そのままカオちゃんと歩いて・・・・・・。
駅にたどり着いて・・・・・・。
外のベンチに並んで座ったら、カオちゃんが言った。
「・・・・・・俺のいない時の芳が心配・・・・・。」
「え?・・・・・どうして?」
ちょっとどき、ってしたんだけど、頑張って平静を装った。
そんな僕をカオちゃんはしっかり見つめると、ため息をついて・・・・・・。
「・・・・・今でもナンパされてるんでしょ?・・・・・・・ちゃんと逃げ切れてるの?」
って言うから・・・・・。
「・・・・そんなあ。」
どういう意味でカオちゃんがそう言ったのかがわからなかったから、カオちゃんを見つめた。
「・・・・怖い思いしてないの?」
って僕の手を握ってカオちゃんは言った。
「・・・・・・・・・カオちゃん。・・・うん。・・・・大丈夫。」
優しいカオちゃんの気持ち。
どきん、てして。
胸のどきどきが勢いよくなった。
「俺がいない時も守ってあげたい。・・・・・芳を傷つけたくない。」
真剣な横顔。
すっごくかっこよくて・・・・・。
真面目な話しをしてるのに、すごく胸がときめいて・・・・・。
そっとカオちゃんの肩にもたれた。
「・・・・・・・ありがと。・・・・・・気をつけるね?・・・・・だいすき。」
「・・・・・・うん。」
しばらくそのままで、道行く人を眺めてから、立ち上がった。
カオちゃんが僕の手を取ってくれる。
知らない間にも、カオちゃんはいつも僕のことを気にかけて、そして・・・・。
守ってくれているの。
カオちゃんの愛情が嬉しくって、幸せで、カオちゃんに好きになってもらってよかった、って心から思った。

すっかり勤務が遅くなって、病院から駅まで急いで歩いていた。
だってもう9時過ぎてるの。
お家に着くのはどんなに早くても10時半くらいになっちゃう!
明日は夜勤だけど、とにかく早くカオちゃんに会いたくて。
いつだってカオちゃんと一緒にいたいの。
もうね、お仕事が終わると、頭の中がカオちゃんのことばかり。
今朝のスーツがかっこよかったこととか、最近つけてるコロンの香りとか。
小走りに駅前の横断歩道を渡って、駅前の飲食店が立ち並ぶとおりを歩いていた僕は、きつく腕を掴まれた。
びっくりして、立ち止まった。
「ちょっと!えらいかわいいじゃん!これから仕事?」
黒いスーツ姿の若い男性は、ヘアースタイルや身のこなし方から、ホストだってわかった。
やたら色が黒くって、豹柄のシャツ着てたら誰だってわかるか。
「・・・帰るところです。」
いつもはこういうの、軽くいなすんだけど、この人は何だかいつもとは違って怖かった。
理由はないのだけれど、僕の経験からそう思ったの。

テーマ : 自作BL小説
ジャンル : 小説・文学

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