妄想限界  薫×芳人 続編12
オリジナルBL小説でございます。 同性愛の内容全開です。 不快になられる方はご覧にならないようお願いいたします。
妄想限界 
薫×芳人 続編12
2008-03-08-Sat  CATEGORY: 長編
お買い物に出て、お洋服を買って、ご飯の材料を買って帰ってきた。
スーツを買ったの。
あのね、立花さんのところのスーツはこの前作ってもらったばかりなんだけどね。
まだ出来上がってないし、助手になったから会議とか学会とかで、スーツの需要が増えたの。
助手の立場でオーダーメードのスーツはちょっと・・・・。
生意気かな、って思って、普通のブランド物のスーツ。なるべく地味目のものを選んだ。
クロゼットにそれを掛けて・・・・。
で、気づいた。
そういえば・・・・。僕。
忘れてたけど、えっと・・・・・。ネクタイ。
ネクタイしなくても大丈夫なのかな・・・・・。
今までは避けてきた。
スーツを着るような場は学会だけで、発表の間だけ人前に立つってだけだったから、ネクタイをしなくても不自然じゃないような服装で、ごまかしてきたけど・・・・・。
これからはどうだろう。
そもそも公共の場でのノーネクタイ、っていうのはルール違反だよね。
服装として正しくない。
だけど・・・・。
両親のことは、本当に吹っ切れたよ?
今は本当に綺麗な心でいられるの。
それと、あのこと・・・・・・。
関係ある・・・かな?
殺されかけた、って事実を僕は・・・・・・・・。
試してみようと思った。
僕はもう両親を憎む気持ちなんかないから、もしかしたら大丈夫かな、って思ったの。
僕はネクタイって一本も持ってなかったから、カオちゃんのクロゼットの中の一本を借りた。
洗面所の大きな鏡の前に立って、ネクタイを手に取る。
細長い、光沢のある綺麗なネクタイ。
首に掛けようとして・・・・・・。
でも・・・・・・。
僕の中で、すごい抵抗感を感じた。
こうして手に持っているだけで・・・・・・。
そして、何気なく視界に入った、鏡の中の僕。
ネクタイを手にした姿が、母の姿と重なる・・・・・・。
身体中を寒気が走る。冷や汗が背中を伝う。
頭の中が、ざあって音を立てて目の前が暗くなっていく・・・・・。
うっ、ってえづいて、口を手で覆った。
涙が目に溜まる。
どうにか戻さずに済んだけど、呼吸が苦しくて、大きく息を吸って吐いて、なんとか呼吸を整えた。
身体を支えるために、壁に手をついて、ネクタイを床に落とした。
ああ・・・・・・・。
ダメ。
まだ僕・・・・・。
きっと忘れられない・・・・・・。
母を、両親を憎む気持ちはなくても、身体が覚えた恐怖は消えそうになかった。
目を閉じるのが怖くて、顔を上げた。
鏡の中の僕。
青白い顔は、母にとても似ている。
そっと指先で鏡を辿った。
頬の辺りや口元。そして、目・・・・・。
こんなに母とのつながりを感じるのに。むしろ、嬉しいことだって、思えるのに。
カオちゃんが、綺麗だと言ってくれる僕の顔。
なのに。
なのに・・・・・・・。
今はこんなに嫌い。
深呼吸して、軽く目を閉じてから、洗面所を離れた。
忘れちゃいたい。
今の幸せでけしちゃいたいのに。
なかなかできないものなんだね・・・・・・。
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