午後からの部署ごとの会議に出席するように医局長から言われて、診察の合間に時間を気にしながら、会議室のパイプ椅子の一つに座っていた。
ロの字に並べられた机に、ホワイトボード。
案件は、器具購入のための予算の割り振りで、実を言うと僕にはよくわからない分野だったりした。
だから、さっきまでの重症患者の治療での疲労がどっと押し寄せてきて、ものすごく眠くて。
間違って肘とかついちゃったら、そのまま眠っちゃうような感じに、頭がぐらぐらする。
一応は書類を見ているふりをしつつ、発表された予算配分だけメモして、何度も襲ってくる眠気を何とかしてやりすごしていた。
そしたら、白衣の胸ポケットに入っていたポケベルがブルブル震えて、目が覚めて、こっそり机の下で画面を見たら、狩野君からだった。
もしかして、患者さんかもしれないし。
ひょっとして人手不足なくらいに、たくさんの患者さんが来たのかもしれなくて。
まだ、半人前くらいの新人さんを4人も抱えて、医局長も僕もいない状態じゃ、どう考えてもきつすぎるから、僕は後ろのドアからそっと会議室を抜け出した。
・・・急患も好きじゃないけど、会議よりはましかな。
って思って、小走りでERへと向かった。
外来は思ったよりも全然静かで、空いていた。
なのに、呼び出しって何かな、って不思議で・・・・・。
急いで医局に入ると、僕を真っ先に見つけた狩野君が、すごい勢いで僕の方へ近づいて、僕の腕を強く握ると、僕をまた医局から廊下へと連れ出した。
「なに・・・・。」
狩野君の手の力が強くて、すごく狩野君と近くて、何だかどぎまぎする。
変な予感がして、僕を真面目に見ている狩野君を見上げた。
「カオちゃんが来てる。」
「えっ!?」
どうして!?
続けて色々聞きそうになった僕を、狩野くんは強く制して、僕をまっすぐに見て言った。
「会社の人が救急搬送で来て、AMIです。」
心臓が・・・・すごくいやな音を立て始める。
AMI・・・・急性心筋梗塞・・・・・。
心筋梗塞は誰にだって起こるけど・・・でも・・・・・。
カオちゃん・・。
そう、どうして・・・・。カオちゃん・・・・・・。
僕の頭が、ぐるぐる回り始める。
「・・・・・・先生を呼ぶように言われました。詳しいこと、先生から聞きたいって。」
「・・・・・狩野君が見たの?」
すごくすごく真剣な狩野君に、僕の背中を汗が伝った。
きっと重篤なんだ。
だから、こんなに・・・・・・・。
「そうです。・・・・外傷1です。」
治療室へ行こうとする、狩野くんの腕を、今度は僕が掴んだ。
「待って!・・・・誰?・・・誰を見たの?」
狩野君が開いた口を、じっと見つめる。
「・・・・金子利一さんです。」
「・・・か・・・ねこ・・・・・さん?」
かねこさんが・・・・・AMI??
「うそ・・・・・!!!」
狩野君から手を離した僕を、狩野君が強く引っ張った。
「早く。・・・・カテが来ちゃうから。」
言われて、うなずいて、動揺したまま外傷1へのドアを開けると・・・・・。
僕の目に、ストレッチャーで酸素投与されている金子さんと、その傍で放心状態のカオちゃんが飛び込んできた。
「先生。」
狩野君が病状を説明してくれる。
カオちゃんが気になって、部屋の隅で小声で聞いた。
狩野君の話はこうだった。
こんにちわ!いつも当ブログを訪問してくださって、ありがとうございます!
カオちゃんと芳君の再開に決定しました!
実はまだ途中までしか書いてません、未完です。
どんだけ長いの!って感じですけど、すこ自身が、二人を気に入っている結果ですね。
末永く、のんびりおつきあいくださいませ。
すこ
ロの字に並べられた机に、ホワイトボード。
案件は、器具購入のための予算の割り振りで、実を言うと僕にはよくわからない分野だったりした。
だから、さっきまでの重症患者の治療での疲労がどっと押し寄せてきて、ものすごく眠くて。
間違って肘とかついちゃったら、そのまま眠っちゃうような感じに、頭がぐらぐらする。
一応は書類を見ているふりをしつつ、発表された予算配分だけメモして、何度も襲ってくる眠気を何とかしてやりすごしていた。
そしたら、白衣の胸ポケットに入っていたポケベルがブルブル震えて、目が覚めて、こっそり机の下で画面を見たら、狩野君からだった。
もしかして、患者さんかもしれないし。
ひょっとして人手不足なくらいに、たくさんの患者さんが来たのかもしれなくて。
まだ、半人前くらいの新人さんを4人も抱えて、医局長も僕もいない状態じゃ、どう考えてもきつすぎるから、僕は後ろのドアからそっと会議室を抜け出した。
・・・急患も好きじゃないけど、会議よりはましかな。
って思って、小走りでERへと向かった。
外来は思ったよりも全然静かで、空いていた。
なのに、呼び出しって何かな、って不思議で・・・・・。
急いで医局に入ると、僕を真っ先に見つけた狩野君が、すごい勢いで僕の方へ近づいて、僕の腕を強く握ると、僕をまた医局から廊下へと連れ出した。
「なに・・・・。」
狩野君の手の力が強くて、すごく狩野君と近くて、何だかどぎまぎする。
変な予感がして、僕を真面目に見ている狩野君を見上げた。
「カオちゃんが来てる。」
「えっ!?」
どうして!?
続けて色々聞きそうになった僕を、狩野くんは強く制して、僕をまっすぐに見て言った。
「会社の人が救急搬送で来て、AMIです。」
心臓が・・・・すごくいやな音を立て始める。
AMI・・・・急性心筋梗塞・・・・・。
心筋梗塞は誰にだって起こるけど・・・でも・・・・・。
カオちゃん・・。
そう、どうして・・・・。カオちゃん・・・・・・。
僕の頭が、ぐるぐる回り始める。
「・・・・・・先生を呼ぶように言われました。詳しいこと、先生から聞きたいって。」
「・・・・・狩野君が見たの?」
すごくすごく真剣な狩野君に、僕の背中を汗が伝った。
きっと重篤なんだ。
だから、こんなに・・・・・・・。
「そうです。・・・・外傷1です。」
治療室へ行こうとする、狩野くんの腕を、今度は僕が掴んだ。
「待って!・・・・誰?・・・誰を見たの?」
狩野君が開いた口を、じっと見つめる。
「・・・・金子利一さんです。」
「・・・か・・・ねこ・・・・・さん?」
かねこさんが・・・・・AMI??
「うそ・・・・・!!!」
狩野君から手を離した僕を、狩野君が強く引っ張った。
「早く。・・・・カテが来ちゃうから。」
言われて、うなずいて、動揺したまま外傷1へのドアを開けると・・・・・。
僕の目に、ストレッチャーで酸素投与されている金子さんと、その傍で放心状態のカオちゃんが飛び込んできた。
「先生。」
狩野君が病状を説明してくれる。
カオちゃんが気になって、部屋の隅で小声で聞いた。
狩野君の話はこうだった。
こんにちわ!いつも当ブログを訪問してくださって、ありがとうございます!
カオちゃんと芳君の再開に決定しました!
実はまだ途中までしか書いてません、未完です。
どんだけ長いの!って感じですけど、すこ自身が、二人を気に入っている結果ですね。
末永く、のんびりおつきあいくださいませ。
すこ
そんな俺をじっと見ていたらしい、俺の思い人は、くすって噴出すと、そのままくすくすって笑った。
その笑顔は、胸に描いていた通りの、愛らしさで、一気に俺を魅了した。
思わず抱きしめたいほどの衝撃に狩られる。
「・・・・・いいですよ。・・・・・携帯しかないんだけど。いいですか?」
まだくすくす笑いながら、俺を見る。
あー、絶対怪しいやつと思われてるな・・・俺。
「・・・・あ、はい。・・・お願いします。あ、えと、失礼ですけど、お名前は・・・?」
携帯電話を俺の手から取って、操作しているのを見ながらたずねた。
この人の、一挙一動を、見逃したくない。
「え?あ。・・・・僕、藤井芳人です。・・・・・・でも、どうして、僕・・・・?」
藤井芳人・・・・・。
はい、って携帯を俺に見せてくれながら、また少し訝しげに俺を見る。
まさか、密かに片思いしてました、なんて言えなくて、ちょっと口ごもったら、思い人は言った。
「・・・・怪しいお仕事の人?」
「あ、違いますよ!それは絶対にないです!・・・・あの、そう!友達!友達になってほしくて!」
自分が興奮と動揺で一杯で、ふと我に返ったら、俺の声がホーム中に響いていた。
すでに電車は駅を離れていて、乗り降りのための客ももうすでにいなくて。
ホームには俺と思い人の2人きりで・・・・・・。
「うふっ。・・・・・お友達?・・・・・・あはっ。・・・・・うふふっ。」
恥ずかしい・・・・・。
俺、今、超ダサい・・・・・・。
思い人は、ひたすら笑うと、目にたまった涙をぬぐって俺を見た。
「・・・・・面白いね。・・・・こんな僕でよかったら、うん。・・・・・よろしくお願いしまう。」
って、ペコって頭を下げて・・・・・。
その瞬間、ふわりと、いいにおいがした。
「あ、こちらこそ・・・・・・。すいません、何か色々と、変なヤツで。」
「・・・・ううん。・・・・・イキナリで少しびっくりしちゃった。」
「・・・・・・すみません。」
渡された携帯電話から、自分の携帯にナンバーを登録して、改札まで並んで歩いた。
夢のようなシチュエーション。
まさか、こんなふうに再会できるなんて。
「あ、でも、僕、勤務がばらばらだから、電話もらっても出れないかもしれない。・・・ごめんね?」
申し訳なさそうに言うから、どきってする。
表情がとても豊かなんだ。
「あ、いえ。・・・お仕事って何されてるんですか?」
「・・・・・あ、僕、病院で・・・・。」
「医者?」
「・・・・一応だけど・・・・・。」
ゆっくりと、もどかしく話す様子も、この人には似合っていて、とても愛らしい。
隣を歩く姿を見ているだけで、やっぱり俺はこの人のことが好きなんだって、改めて思った。
「・・・・すごい。・・・・・・あ、引き止めてすみません。」
「ううん。平気。・・・・・カオちゃんは?大丈夫?」
「・・・カオちゃん?」
イキナリそう言われて、どきって。
「あ、ダメ・・・・だよね、ごめんなさい。」
少し、しゅん、ってなった感じに、慌てて答えた。
「あ、いえ、平気ですから。はい。」
「・・・ふふっ。僕のことも、芳人って呼んでね?・・・じゃ、これで。また。」
改札を通って、俺とは反対方向へ出て行く思い人の背中を、俺はずっと見ていた。
どきどきが止まらない。
嘘みたいな奇跡に、その場でガッツポーズした。
そんな俺を見た駅員が、びくってした。
その笑顔は、胸に描いていた通りの、愛らしさで、一気に俺を魅了した。
思わず抱きしめたいほどの衝撃に狩られる。
「・・・・・いいですよ。・・・・・携帯しかないんだけど。いいですか?」
まだくすくす笑いながら、俺を見る。
あー、絶対怪しいやつと思われてるな・・・俺。
「・・・・あ、はい。・・・お願いします。あ、えと、失礼ですけど、お名前は・・・?」
携帯電話を俺の手から取って、操作しているのを見ながらたずねた。
この人の、一挙一動を、見逃したくない。
「え?あ。・・・・僕、藤井芳人です。・・・・・・でも、どうして、僕・・・・?」
藤井芳人・・・・・。
はい、って携帯を俺に見せてくれながら、また少し訝しげに俺を見る。
まさか、密かに片思いしてました、なんて言えなくて、ちょっと口ごもったら、思い人は言った。
「・・・・怪しいお仕事の人?」
「あ、違いますよ!それは絶対にないです!・・・・あの、そう!友達!友達になってほしくて!」
自分が興奮と動揺で一杯で、ふと我に返ったら、俺の声がホーム中に響いていた。
すでに電車は駅を離れていて、乗り降りのための客ももうすでにいなくて。
ホームには俺と思い人の2人きりで・・・・・・。
「うふっ。・・・・・お友達?・・・・・・あはっ。・・・・・うふふっ。」
恥ずかしい・・・・・。
俺、今、超ダサい・・・・・・。
思い人は、ひたすら笑うと、目にたまった涙をぬぐって俺を見た。
「・・・・・面白いね。・・・・こんな僕でよかったら、うん。・・・・・よろしくお願いしまう。」
って、ペコって頭を下げて・・・・・。
その瞬間、ふわりと、いいにおいがした。
「あ、こちらこそ・・・・・・。すいません、何か色々と、変なヤツで。」
「・・・・ううん。・・・・・イキナリで少しびっくりしちゃった。」
「・・・・・・すみません。」
渡された携帯電話から、自分の携帯にナンバーを登録して、改札まで並んで歩いた。
夢のようなシチュエーション。
まさか、こんなふうに再会できるなんて。
「あ、でも、僕、勤務がばらばらだから、電話もらっても出れないかもしれない。・・・ごめんね?」
申し訳なさそうに言うから、どきってする。
表情がとても豊かなんだ。
「あ、いえ。・・・お仕事って何されてるんですか?」
「・・・・・あ、僕、病院で・・・・。」
「医者?」
「・・・・一応だけど・・・・・。」
ゆっくりと、もどかしく話す様子も、この人には似合っていて、とても愛らしい。
隣を歩く姿を見ているだけで、やっぱり俺はこの人のことが好きなんだって、改めて思った。
「・・・・すごい。・・・・・・あ、引き止めてすみません。」
「ううん。平気。・・・・・カオちゃんは?大丈夫?」
「・・・カオちゃん?」
イキナリそう言われて、どきって。
「あ、ダメ・・・・だよね、ごめんなさい。」
少し、しゅん、ってなった感じに、慌てて答えた。
「あ、いえ、平気ですから。はい。」
「・・・ふふっ。僕のことも、芳人って呼んでね?・・・じゃ、これで。また。」
改札を通って、俺とは反対方向へ出て行く思い人の背中を、俺はずっと見ていた。
どきどきが止まらない。
嘘みたいな奇跡に、その場でガッツポーズした。
そんな俺を見た駅員が、びくってした。
嘘みたいな話だが。
「落ちましたよ。」
偶然乗った電車を降りた時、前を歩いていた人が、何か落とした。
拾い上げてみたら、なんと携帯電話。
慌てて、落とし主の肩を掴んだ。
薄い肩がこっちを振り向く。
ぐいと引き寄せて・・・・・。
あ・・・・・・!
ずっと胸から消えないままの、その顔が俺を見つめた。
茶色の優しげな瞳に、俺が映る。
「あ・・えっと。・・・・・・・?」
そういうと、顔を伏せて、そっと俺から離れた。
髪も茶色でさらさらと柔らかそうで。
うつむいたうなじが、とても白くて、どきん、とした。
胸がどきどきと高鳴る。
目の前に、俺の胸に焼きついている人がいる・・・・・・。
「・・・あの・・・・・・?」
ちらりとその人が俺を見る。
目に少し恐怖感が浮かんでいて、はっとした。
「あ、あの、コレ、コレ、落としましたよ?」
手に握り締めていた携帯電話。
差し出したら、その表情が、ぱあっと明るくなった。
「え?これ、僕のですか?・・・・ありがとう。」
にっこり微笑んだ笑顔。
頬が少し赤くて、俺から見えるまつげが長くて・・・・・・。
みとれて・・・・・・。
「あ、いえ・・・・・。」
初めて見る、思い人のいろんな表情に、俺の胸がせわしなく高鳴る。
この奇跡的な再開を、絶対に無駄にしたくない。
白い手が、俺の手から携帯電話を取ろうとする。
俺は、思わず、携帯電話を握り締めた。
「え?・・・・あの・・・・?」
訝しげな表情。
気持ちを隠さない表情に、見とれる。
かわいくて、胸が高鳴って、平静を保てない。
「・・・・・連絡先、教えてもらってもいいっすか?」
思わず言ってしまってから、その人の顔にはてなマークが浮かんでいて、はっとした。
これじゃ、俺、怪しいよ。
ナンパみたいじゃん。
「あ、あの、あの、俺は、こういうもんです。」
ブレザーの内ポケットから、名前と電話番号だけが書いてある名刺を取り出して渡した。
白い細い指が、名刺を受け取る。
「・・・・伊藤薫さん?」
「あ、はい。あの、コレって、何かのご縁があると思うんですよ。あの、俺、怪しいもんじゃなくて・・・・・。ええと。・・・・・あの・・・。」
何て言っていいかわからなくて、頭の中が真っ白になってくる。
すごく動揺して、鼻の頭に汗が浮かぶ。
「落ちましたよ。」
偶然乗った電車を降りた時、前を歩いていた人が、何か落とした。
拾い上げてみたら、なんと携帯電話。
慌てて、落とし主の肩を掴んだ。
薄い肩がこっちを振り向く。
ぐいと引き寄せて・・・・・。
あ・・・・・・!
ずっと胸から消えないままの、その顔が俺を見つめた。
茶色の優しげな瞳に、俺が映る。
「あ・・えっと。・・・・・・・?」
そういうと、顔を伏せて、そっと俺から離れた。
髪も茶色でさらさらと柔らかそうで。
うつむいたうなじが、とても白くて、どきん、とした。
胸がどきどきと高鳴る。
目の前に、俺の胸に焼きついている人がいる・・・・・・。
「・・・あの・・・・・・?」
ちらりとその人が俺を見る。
目に少し恐怖感が浮かんでいて、はっとした。
「あ、あの、コレ、コレ、落としましたよ?」
手に握り締めていた携帯電話。
差し出したら、その表情が、ぱあっと明るくなった。
「え?これ、僕のですか?・・・・ありがとう。」
にっこり微笑んだ笑顔。
頬が少し赤くて、俺から見えるまつげが長くて・・・・・・。
みとれて・・・・・・。
「あ、いえ・・・・・。」
初めて見る、思い人のいろんな表情に、俺の胸がせわしなく高鳴る。
この奇跡的な再開を、絶対に無駄にしたくない。
白い手が、俺の手から携帯電話を取ろうとする。
俺は、思わず、携帯電話を握り締めた。
「え?・・・・あの・・・・?」
訝しげな表情。
気持ちを隠さない表情に、見とれる。
かわいくて、胸が高鳴って、平静を保てない。
「・・・・・連絡先、教えてもらってもいいっすか?」
思わず言ってしまってから、その人の顔にはてなマークが浮かんでいて、はっとした。
これじゃ、俺、怪しいよ。
ナンパみたいじゃん。
「あ、あの、あの、俺は、こういうもんです。」
ブレザーの内ポケットから、名前と電話番号だけが書いてある名刺を取り出して渡した。
白い細い指が、名刺を受け取る。
「・・・・伊藤薫さん?」
「あ、はい。あの、コレって、何かのご縁があると思うんですよ。あの、俺、怪しいもんじゃなくて・・・・・。ええと。・・・・・あの・・・。」
何て言っていいかわからなくて、頭の中が真っ白になってくる。
すごく動揺して、鼻の頭に汗が浮かぶ。
「ちょっと待ってよ!もう?」
「・・・・それが目的なんだろ?・・・・抵抗するなよ。」
少しでも似てれば・・・・・。
少しでも面影があれば・・・・・・。
バーで声を掛けてきた男を、トイレの壁に押し付けて、身体の中をうねる欲求を容赦なくぶつけた。
少しでも似てれば・・・・・。
少しでも・・・・・。
身体がすっきりしても、胸に詰まったコレは、消えそうになかった。
どこにいても俺は、面影を探す。
一度しか会ったことのないあの人を、忘れられない。
色白の、優しそうな表情。
小柄な身体。
微笑むためにあるような、茶色の瞳。
恋に落ちた自分を自覚したのは、初めてだった。
「片思いー?おまえが!?」
会社帰りに立ち寄ったバーで、本庄が驚いて俺を見た。
「・・・そうだよ。・・・・・そんなに意外かよ。」
黒いテーブルに、ライトが反射して美しい。
スツールに腰掛けると、丁度よい高さのテーブルに、肘をついて酒を飲み干した。
「あ、いや・・・・・。」
本庄はもごもごと言うと、ため息をついた。
「で、どこの誰?」
「・・・・知らね。」
カウンターの向こうには、年老いたマスターが丁寧に酒を作っている。
小さい飲み屋だけど、マスターの作る酒が美味くて、俺のお気に入りなんだ。
「・・・・・はあ?・・・なんだソレ?」
本庄はグラスを手に持つと、俺を見た。
「一度しか会ってないし。・・・・・どこに住んでるかさえ知らない。」
さっと差し出された、新しい酒。
作りたてを一口飲んで、やっぱり俺の味覚は正しいと実感した。
思わず漏れたため息。
ふと、俺の隣に座ったやつが、俺のことを誘ってるのがわかった。
俺を見る視線。
少しでも似てれば・・・・・。
少しでも面影があれば・・・・・。
「で、お前はどうすんの?」
本庄が俺を、現実に引き戻した。
あの人のことで一杯になっていた頭が、少し冷静になる。
「・・・・・どうするかな。・・・・けど俺はあきらめの悪い男なんだ。」
もう一度会いたい。
会えたなら、すぐに話しかける。
まずは俺のことを認識してほしい。
「ははっ。」
笑った本庄が酒を飲んだ隙に、隣のヤツに目で断った。
よく見なくったって、どこも似ていない。
面影なんかない。
俺の中のあの人は、ただ一人しかいない・・・・・。
「・・・・それが目的なんだろ?・・・・抵抗するなよ。」
少しでも似てれば・・・・・。
少しでも面影があれば・・・・・・。
バーで声を掛けてきた男を、トイレの壁に押し付けて、身体の中をうねる欲求を容赦なくぶつけた。
少しでも似てれば・・・・・。
少しでも・・・・・。
身体がすっきりしても、胸に詰まったコレは、消えそうになかった。
どこにいても俺は、面影を探す。
一度しか会ったことのないあの人を、忘れられない。
色白の、優しそうな表情。
小柄な身体。
微笑むためにあるような、茶色の瞳。
恋に落ちた自分を自覚したのは、初めてだった。
「片思いー?おまえが!?」
会社帰りに立ち寄ったバーで、本庄が驚いて俺を見た。
「・・・そうだよ。・・・・・そんなに意外かよ。」
黒いテーブルに、ライトが反射して美しい。
スツールに腰掛けると、丁度よい高さのテーブルに、肘をついて酒を飲み干した。
「あ、いや・・・・・。」
本庄はもごもごと言うと、ため息をついた。
「で、どこの誰?」
「・・・・知らね。」
カウンターの向こうには、年老いたマスターが丁寧に酒を作っている。
小さい飲み屋だけど、マスターの作る酒が美味くて、俺のお気に入りなんだ。
「・・・・・はあ?・・・なんだソレ?」
本庄はグラスを手に持つと、俺を見た。
「一度しか会ってないし。・・・・・どこに住んでるかさえ知らない。」
さっと差し出された、新しい酒。
作りたてを一口飲んで、やっぱり俺の味覚は正しいと実感した。
思わず漏れたため息。
ふと、俺の隣に座ったやつが、俺のことを誘ってるのがわかった。
俺を見る視線。
少しでも似てれば・・・・・。
少しでも面影があれば・・・・・。
「で、お前はどうすんの?」
本庄が俺を、現実に引き戻した。
あの人のことで一杯になっていた頭が、少し冷静になる。
「・・・・・どうするかな。・・・・けど俺はあきらめの悪い男なんだ。」
もう一度会いたい。
会えたなら、すぐに話しかける。
まずは俺のことを認識してほしい。
「ははっ。」
笑った本庄が酒を飲んだ隙に、隣のヤツに目で断った。
よく見なくったって、どこも似ていない。
面影なんかない。
俺の中のあの人は、ただ一人しかいない・・・・・。
「・・・・・好きだ・・・・・・。」
「・・・・うん・・・・・・。」
カオちゃんが僕の背中を抱きしめる。
自由な片手が僕の髪をなぜる。
「・・・・・芳・・・?」
「・・・・ん?」
唇が触れるたび、触れたところが熱くて、溶けちゃいそうになる。
「・・・・・・抱いていいか・・・・?」
「・・・・・・・・カオル・・・・・。」
首にしがみついていた腕を背中に回して、その背筋を指先でなぜた。
たくましい筋肉。広い背中。
「ん・・・・?・・・・・・・何?」
甘い甘い囁きに、体の力が抜ける。
「・・・・・・・僕を嫌いにならないで・・・・・・?」
心を込めて口にした。
レイプされた僕のこと、どうか見捨てないで・・・・・・。
「馬鹿・・・・。・・・・・嫌いになんかなるわけないだろ?・・・・俺の妻なのに・・・。こんなに愛してるのに・・・・・・。」
カオちゃんは僕を見つめると、優しく微笑んだ。
「・・・・芳は俺の妻だ。・・・・・・中途半端な気持ちなら、妻になんかしないよ。」
「・・・・・カオル・・・・・・。」
「ん・・・・・・。・・・・・・・安心して・・・?俺をずっと見てて・・・・?」
「うん・・・・・・。」
そおっとベッドに横たえられて、裸になったカオちゃんに僕も裸にされる。
カオちゃんの目が細くなって、僕の体を見つめる・・・。
目が覚めたら、カオちゃんが優しい顔で僕を見ていた。
僕の髪をなぜてくれている、優しい手つき。
裸の首筋に赤いシルシがついていて、照れちゃう・・・・。
「・・・・・愛してる。・・・・・辛くないか?」
唇に触れるだけのキスをして、カオちゃんが僕を見た。
ただとなりに横になっているだけなのに、僕を包んでいてくれるようで、安心して・・・。
「・・・・うん・・・・・。大丈夫・・・・・。カオル・・・?」
「ん?」
優しい顔・・・・・。
僕を思っていてくれるカオちゃん。
「・・・僕・・・・カオちゃんとなら・・・何でもできる気がする・・・・・。ありがとお・・・・・。」
カオちゃんの頬をなぜた。
カオちゃんが傍にいてくれるだけで、強い気持ちになれる。
カオちゃんはちょっと笑うと、僕にキスして・・・・・。
「水臭いぞ。・・・・・芳の悩みは俺の悩みだし、うれしいことも全部一緒だ。」
カオちゃん・・・・・・。
うん・・・・・うん・・・・・。そうだね・・・・・。
結婚するってことは、そういうことなんだね・・・・・。
「・・・・・ありがとお・・・・・。」
うれしくて、でも泣くのを我慢してたら、すごい涙声で・・・・・・。
「ご、ごめん・・・僕っ・・・・・。」
ぼろって涙が溢れた。
安堵感で一杯の、あったかい涙がこぼれる。
「芳人。・・・・・愛してる。」
カオちゃんの腕が僕を包む。
暖かい胸に抱きしめられて、僕を幸せな気持ちが包む。
「・・・・・・うん・・・・。カオちゃん・・・・・・。だあいすき・・・・。」
カオちゃんが愛しい。
本当にカオちゃんがいてくれて、よかった。
僕を選んでくれてよかった。
それから知ったことだけど。
今日、カオちゃん、お仕事だったんだ!
「ごめんなさい、カオちゃん。知らなくって。」
会社を大遅刻して、玄関で靴を履いていたカオちゃんに言った。
「はは。いいんだよ。・・・・・心配しないで。」
「・・・・でもお。・・・・・本当にごめんなさい。」
カオちゃんは僕にくすって笑うと、ちゅう・・・って熱いキス。
「愛してるよ。」
僕をまっすぐに見つめて言ってくれる。
「・・・・僕も。」
僕もカオちゃんになら、目を見て言える。
僕に微笑んでもう一度キスをして、出かけていったカオちゃんの後姿をずっと見ていた。
愛・・・ってすごく難しくて、深い感情。
僕は、本当に愛がどんなものか知らなくて、カオちゃんにもらう一方だった。
だけど・・・・・。
今胸に抱いている気持ちが愛なら。
カオちゃんと一緒に育てたい。
そして、僕もカオちゃんにあげたいの。
弱虫な僕だけれど、僕を支え続けてくれるカオちゃんと、愛して愛されて、そんな風にいたい。
それは、カオちゃんとだからできる。
そんな当たり前のことだって、僕はやっと知ったんだよ・・・・・。
「・・・・うん・・・・・・。」
カオちゃんが僕の背中を抱きしめる。
自由な片手が僕の髪をなぜる。
「・・・・・芳・・・?」
「・・・・ん?」
唇が触れるたび、触れたところが熱くて、溶けちゃいそうになる。
「・・・・・・抱いていいか・・・・?」
「・・・・・・・・カオル・・・・・。」
首にしがみついていた腕を背中に回して、その背筋を指先でなぜた。
たくましい筋肉。広い背中。
「ん・・・・?・・・・・・・何?」
甘い甘い囁きに、体の力が抜ける。
「・・・・・・・僕を嫌いにならないで・・・・・・?」
心を込めて口にした。
レイプされた僕のこと、どうか見捨てないで・・・・・・。
「馬鹿・・・・。・・・・・嫌いになんかなるわけないだろ?・・・・俺の妻なのに・・・。こんなに愛してるのに・・・・・・。」
カオちゃんは僕を見つめると、優しく微笑んだ。
「・・・・芳は俺の妻だ。・・・・・・中途半端な気持ちなら、妻になんかしないよ。」
「・・・・・カオル・・・・・・。」
「ん・・・・・・。・・・・・・・安心して・・・?俺をずっと見てて・・・・?」
「うん・・・・・・。」
そおっとベッドに横たえられて、裸になったカオちゃんに僕も裸にされる。
カオちゃんの目が細くなって、僕の体を見つめる・・・。
目が覚めたら、カオちゃんが優しい顔で僕を見ていた。
僕の髪をなぜてくれている、優しい手つき。
裸の首筋に赤いシルシがついていて、照れちゃう・・・・。
「・・・・・愛してる。・・・・・辛くないか?」
唇に触れるだけのキスをして、カオちゃんが僕を見た。
ただとなりに横になっているだけなのに、僕を包んでいてくれるようで、安心して・・・。
「・・・・うん・・・・・。大丈夫・・・・・。カオル・・・?」
「ん?」
優しい顔・・・・・。
僕を思っていてくれるカオちゃん。
「・・・僕・・・・カオちゃんとなら・・・何でもできる気がする・・・・・。ありがとお・・・・・。」
カオちゃんの頬をなぜた。
カオちゃんが傍にいてくれるだけで、強い気持ちになれる。
カオちゃんはちょっと笑うと、僕にキスして・・・・・。
「水臭いぞ。・・・・・芳の悩みは俺の悩みだし、うれしいことも全部一緒だ。」
カオちゃん・・・・・・。
うん・・・・・うん・・・・・。そうだね・・・・・。
結婚するってことは、そういうことなんだね・・・・・。
「・・・・・ありがとお・・・・・。」
うれしくて、でも泣くのを我慢してたら、すごい涙声で・・・・・・。
「ご、ごめん・・・僕っ・・・・・。」
ぼろって涙が溢れた。
安堵感で一杯の、あったかい涙がこぼれる。
「芳人。・・・・・愛してる。」
カオちゃんの腕が僕を包む。
暖かい胸に抱きしめられて、僕を幸せな気持ちが包む。
「・・・・・・うん・・・・。カオちゃん・・・・・・。だあいすき・・・・。」
カオちゃんが愛しい。
本当にカオちゃんがいてくれて、よかった。
僕を選んでくれてよかった。
それから知ったことだけど。
今日、カオちゃん、お仕事だったんだ!
「ごめんなさい、カオちゃん。知らなくって。」
会社を大遅刻して、玄関で靴を履いていたカオちゃんに言った。
「はは。いいんだよ。・・・・・心配しないで。」
「・・・・でもお。・・・・・本当にごめんなさい。」
カオちゃんは僕にくすって笑うと、ちゅう・・・って熱いキス。
「愛してるよ。」
僕をまっすぐに見つめて言ってくれる。
「・・・・僕も。」
僕もカオちゃんになら、目を見て言える。
僕に微笑んでもう一度キスをして、出かけていったカオちゃんの後姿をずっと見ていた。
愛・・・ってすごく難しくて、深い感情。
僕は、本当に愛がどんなものか知らなくて、カオちゃんにもらう一方だった。
だけど・・・・・。
今胸に抱いている気持ちが愛なら。
カオちゃんと一緒に育てたい。
そして、僕もカオちゃんにあげたいの。
弱虫な僕だけれど、僕を支え続けてくれるカオちゃんと、愛して愛されて、そんな風にいたい。
それは、カオちゃんとだからできる。
そんな当たり前のことだって、僕はやっと知ったんだよ・・・・・。







